2026年10月のデザイン・クリエイティブでは、AIや制作ツールによる自動化がさらに進む一方、完成するビジュアルには手描き、紙、擦れ、コピー機ノイズ、不完全なタイポグラフィなど「人間が制作した痕跡」を取り入れる表現が目立っています。

Web・LPでは情報を一画面へ詰め込まず、短いコピーと強いビジュアルで1メッセージずつ伝える構成が増加。SNS広告では通常投稿や会話に近いコピー、非広告的な構図が引き続き重要になっています。

この記事では、2026年9月末〜10月初旬に公開・話題化した事例や制作ツールの動向を中心に、広告、ブランド、Web、SNS、映像、タイポグラフィ、Adobe、Framer、Canvaまで、デザイナーが押さえておきたい最新トレンドをまとめます。

この記事で分かること

  • 2026年10月に注目されているビジュアル表現
  • アナログ・Rawな質感が増えている理由
  • 広告・ブランドで使われている「違和感」の作り方
  • 最新パッケージ・広告キャンペーン事例
  • Web・LPの最新ファーストビュー構成
  • SNS・ショート広告で増えているコピー・構図
  • 非AIを含む最新モーションデザイン
  • Photoshop・Illustrator・After Effects・Premiereの最新動向
  • Framer SkillsとAI Web制作の変化
  • Canvaの編集可能なAI Designへの進化
  • 注目タイポグラフィ・フォント
  • 今すぐ試せるデザイン実践テスト

1|「完璧に整えない」デザインがさらに拡大

AIによって高品質で整った画像やレイアウトを制作しやすくなった一方、グラフィック・広告では意図的な違和感を残す表現が増えています。

紙、コピー機ノイズ、擦れ、インク、手描き、荒い切り抜き、文字のズレなど、従来なら修正対象になっていた要素をあえて残します。

ポイントは、デザイン全体を崩すことではありません。

80%を整え、残り20%だけに強い個性や違和感を入れることで、視認性と記憶性を両立できます。

2|カテゴリーの定番を1つだけ裏切るブランドデザイン

オリーブオイルブランドDrzzlは、一般的なオリーブオイルで使われやすい自然色、クラフト感、地中海イメージだけに寄せず、鮮やかな色や個性的なワードマークを組み合わせています。

ここで参考になるのは、カテゴリー認識そのものを完全に捨てていないことです。

ユーザーが商品カテゴリーを理解できる状態を保ちながら、1つだけ予想外の要素を追加することでブランドらしさを作っています。

美容広告なら、白背景・水・透明感などの定番表現を残しながら、巨大な手書き文字や大胆なクロップを加えると応用できます。

3|紙・ノイズ・コピー機・手描きなど「素材感」が定着

デジタル制作でありながら、印刷・スキャンしたような物質的な質感を加える表現は引き続き増えています。

  • 紙Texture
  • コピー機ノイズ
  • インクのかすれ
  • 手描きライン
  • 切り抜き
  • テープ
  • 粒子
  • 荒い印刷表現

すべての要素へTextureを加えるのではなく、見出し、背景、装飾、写真周辺など一部へ限定して使うと、広告でも読みやすさを維持できます。

4|Typographyは「統一」より異なる書体の組み合わせへ

巨大なSans Serifだけで構成するデザインから、複数の文字表現を同じ画面で組み合わせる方向へ広がっています。

例えば、

  • 巨大なSans Serif
  • 極小の説明文
  • Serif
  • Monospace
  • 手書き文字

などを役割ごとに使い分けます。

Typographyを単なる情報表示ではなく、画像やTextureと同じ「デザイン素材」として扱うことがポイントです。

5|注目Typeface|Autêntica Serif・Novaform・GRX Poster Raw

2026年秋は、個性のあるDisplay Typefaceも増えています。

Autêntica SerifはBrazilian Brutalismに着想した丸みのあるSerifで、美容、Lifestyle、Editorialなどと相性があります。

Novaformは1970年代のPhototypesettingを思わせるGeometric Typefaceで、音楽、テック、ファッションなどで使いやすい書体です。

GRX Poster Rawは荒れたTextureを取り込んだDisplay Typefaceで、Raw・Analog系の広告KVやイベントビジュアルに適しています。

またExemplarのように長期間かけて設計された多言語書体も注目されており、短時間で生成されるAIデザインとは異なる「時間そのもの」がデザイン価値になる動きも見られます。

6|パッケージを「説明メディア」として使う

ミールキットRiffでは、パッケージを商品を入れる箱としてだけでなく、料理方法や体験を伝えるメディアとして設計しています。

広告制作でも、商品画像と説明文を別々に配置するだけではなく、商品そのものを情報の中心として扱う方法へ応用できます。

例えば美容商品なら、商品を中心にSTEP 01、STEP 02、STEP 03を配置し、使用方法そのものをKV化する構成が考えられます。

7|SNS広告コピーは「説明」より「違和感のある一言」へ

洗剤ブランドEcoverによる「洗わない」という逆説的なメッセージのように、ブランドが本来推奨しそうな行動と逆の言葉を使う表現は、スクロール中のユーザーの注意を引きやすくなります。

SNS広告では、

「新商品が登場しました」

より、

「これ、最初は信じていなかった。」

のような会話の一言に近いコピーが有効なケースがあります。

広告コピーを「商品の説明」ではなく、続きを読みたくなる会話の入口として設計する考え方です。

8|SNS広告は「広告らしくない構図」がさらに重要

SNSでは完成された広告KVだけでなく、ユーザーが普段見ている投稿形式へ近づける構図が増えています。

  • 商品を画面いっぱいに見せる超寄り
  • 顔半分+商品
  • 検索画面・レビュー・チャット風UI
  • コメントから始まる構成
  • Before / After
  • 手書きメモ・マーカー

ただし広告やPRであることを隠すこととは別問題です。媒体ルールに沿った表示を行いながら、クリエイティブだけをNativeな投稿表現へ寄せる必要があります。

9|Web・LPは「1画面1メッセージ」へ

ファーストビューへ機能、説明、実績、CTA、製品画像などをすべて詰め込む構成より、短いコピーと強い1ビジュアルで最初のメッセージを明確にする設計が重要になっています。

特にBtoB LPでは「何ができるか」より、導入した結果、ユーザーや企業がどう変わるのかを最初に見せる方法が有効です。

詳細な機能説明は2画面目以降へ移し、ファーストビューではサービス価値の理解を優先します。

10|スクロールを「ページ送り」のように使うWeb表現

縦に情報を並べ続けるのではなく、スクロールに合わせてコピー、背景、商品、画像などを切り替える構成が増えています。

1スクロール=1メッセージとして設計すると、複雑なサービスでも順序立てて内容を伝えられます。

Framerなどモーションを扱いやすいWeb制作ツールとの相性も良い表現です。

11|Motion Designは「全部動かす」よりStop & Move

映像やモーショングラフィックスでは、常に大きな動きやTransitionを入れるのではなく、静止と動きを交互に使う表現が効果的です。

例えば15秒広告なら、

  • 0〜3秒:静止
  • 3〜4秒:TypographyだけMotion
  • 4〜8秒:静止
  • 8〜9秒:商品だけMotion
  • 9〜15秒:静止+CTA

とすることで、動いた瞬間へ視線を集中させられます。

Typography自体を伸ばす、押す、潰す、Maskにするなど、文字そのものをMotion素材として扱う方法も注目です。

12|制作ツールは「AI完成品」から「編集可能な制作データ」へ

2026年秋の制作ツールで共通しているのは、AIが完成品だけを出力するのではなく、人間が途中から編集できる状態を維持する方向です。

Photoshop

自然言語だけでなく、Mask、丸、矢印、簡単なSketchなどを使い、画像上で修正箇所を指定する操作が増えています。

AIへの指示が「プロンプトを書く」から「デザインの赤入れをする」方法へ近づいています。

Illustrator

Vector案の複数生成やPattern・Gradient素材の拡充などにより、アイコン、装飾、背景Graphicなどのラフ制作を効率化できます。

After Effects

26.5ではGuide設定、Object Mask Cache、Effect Color Labelなど、生成AIとは別の制作管理機能も改善しています。

Premiere Pro

Transcriptから必要な文章を選択し、ラフなSequenceを作るPaper Editなど、編集作業の前工程を短縮する機能が進んでいます。

Framer

Skillsを使い、Design System、文章スタイル、CMSルール、ComponentなどをAgentへ共有できます。

Prompt → Web生成ではなく、Design System → AI → Web制作という方向です。

Canva

AI生成画像だけでなく、テキスト・レイヤー・構造を保った編集可能なDesignデータを生成する方向へ進んでいます。

Affinity、Cavalry、Flourish、Leonardoなども含め、Canvaは単純なデザインツールから制作Suiteへ領域を広げています。

AI時代にデザイナーの価値はどこへ移るのか

AI制作を積極的に導入する企業が増える一方、AIを制作へ入れない姿勢をブランドとして打ち出すStudioも登場しています。

重要なのは「AIを使うか・使わないか」の二択ではありません。

生成できること自体が一般化するほど、

  • 何を選ぶか
  • 何を捨てるか
  • どこを崩すか
  • どう編集するか
  • どんな世界観へまとめるか

というデザイナーの判断が重要になります。

商用デザインでは環境表現・Greenwashingにも注意

「Eco」「Green」「Sustainable」「Carbon Neutral」などの環境訴求は、デザイン上のイメージだけで使用するのではなく、その表現を裏付ける根拠が必要です。

緑色、葉、地球などを組み合わせただけで環境配慮を主張すると、広告表現として問題になる可能性があります。

特に海外展開するブランドやEU向けクリエイティブでは、法規制や表示ルールの確認が重要です。

2026年10月のトレンド|定着するもの・弱まるもの

動き見方
アナログ・Raw Texture定着寄り。AIによる均質化との差別化に使いやすい
巨大Typography定着。ただし巨大文字だけでは差別化しにくくなる
Handwritten Accent定着寄り。デジタル制作へ人間味を加えやすい
AI生成だけで完成弱まり、人間による編集・仕上げが重要になる
AI × Design System今後さらに定着する可能性が高い
Editable AI Design非常に重要。完成画像より編集可能データへ
過剰な3D用途限定。3Dそのものは残るが、置くだけでは弱い
Lo-fi SNS広告定着寄り。SNSネイティブな体験との相性が良い

今週すぐ試せる5つのデザイン実践テスト

TEST 1|80%綺麗+20%違和感

通常の広告KVを1枚制作し、手書き、巨大文字、Raw Texture、破れ紙、意図的なCropのどれか1つだけを追加します。

通常版と比較し、どちらの方が記憶に残るか確認します。

TEST 2|同じ商品を3つのArt Directionで制作

同じ商品・コピーを使い、Clean Corporate、Analog Editorial、Bold Typographyの3方向を作ります。

商品やコピーを変更せず、Art Directionだけでどの程度印象が変わるか確認します。

TEST 3|Photoshopで視覚的な赤入れ編集を試す

画像に丸、矢印、簡単なSketchを加え、AIへ文章だけではなく視覚情報で修正箇所を伝えます。

TEST 4|Framerに自分のLP制作ルールを渡す

Heading、Spacing、Button、Card、文章トーンなどを定義し、そのルールを維持した別ページを作れるか確認します。

TEST 5|15秒動画で「動かしすぎない」を試す

静止時間を長く取り、Typographyや商品など一部の要素だけを短時間動かします。

常にMotionがある動画と比較して、視線誘導・高級感・情報の読みやすさを確認します。

まとめ|制作工程はAIへ、ブランドの個性は人間へ

2026年10月のクリエイティブでは、AIやAgentによる制作効率化と、人間らしい不完全さを取り入れたビジュアル表現が同時に進んでいます。

Photoshopは視覚的な赤入れ、FramerはDesign Systemを使ったAI制作、Canvaは編集可能なAI Designなど、制作工程はさらに自動化されていきます。

その一方で、完成するデザインには手書き、紙、Texture、個性的なTypography、歴史や文化など、AIだけでは均質になりやすい要素が求められています。

AIで土台を速く作り、最後の20%に人間の判断・違和感・世界観を入れる。

これが2026年秋のデザイン制作で、特に意識しておきたい考え方です。