2026年9月のデザイン・クリエイティブでは、AIによる制作効率化が加速する一方で、ビジュアル表現では手描き、紙、写真、歴史、ブランド固有の記号など「人間らしさ」を取り戻す動きが目立っています。

今週はGuinness、Tabby、KFC、Santa Maria Novellaなどの広告・ブランド・Web事例に加え、Adobe、Canva、Framer、Variable Fontなど制作ツール・タイポグラフィの動向も押さえておきたいところです。

この記事では、2026年9月にクリエイターが知っておきたいデザイン・広告・Web・SNS・映像・制作ツールの最新動向を、「なぜ良いのか」「どこを真似できるのか」「仕事でどう使えるのか」まで解説します。

この記事で分かること

  • 2026年9月に注目したいデザイントレンド
  • Guinness・Tabby・KFCなど最新広告事例
  • ブランドデザイン・リブランディングの変化
  • Web・LP・UI/UXの最新表現
  • SNS・ショート広告のクリエイティブ動向
  • 3D・モーショングラフィックス・タイポ表現
  • Adobe・Canva・Framerの重要アップデート
  • フォント・Variable Typographyの動向
  • 今後定着しそうなトレンド
  • 実際の制作ですぐ試せるデザインテスト

1|AI時代に「人間らしいデザイン」が増えている

AIによって高品質な画像や3D表現を短時間で制作できるようになった一方、ブランドデザインでは逆に、手描き、紙、印刷、写真、少し不均一なタイポグラフィなど、人が制作した痕跡を感じる表現が注目されています。

単純なレトロブームではなく、AIでも簡単に作れる「綺麗なデジタル表現」だけではブランドの差別化が難しくなったことも背景にあります。

広告やKVでも、完成度を下げるのではなく、あえて手描き線、紙、スキャン、印刷表現などを加えることで、デジタルだけでは出しにくい個性を作る方法が考えられます。

2|Tabby|「テック企業らしさ」を捨てるブランドデザイン

フィンテック企業Tabbyのリブランドでは、金融・テック企業でよく使われるグラデーション、光沢のある3D、汎用的なベクターイラストなどから距離を取り、手描きキャラクター、人間味のある写真、独自のArabic-Latin typographyなどを採用しています。

参考になるポイントは「業界でよく見る表現を、あえて使わない」こと。

AIへ「フィンテック企業のKV」と指示するとカテゴリーらしいビジュアルを簡単に生成できますが、その結果、多くのブランドが似て見える可能性もあります。

ブランド制作では「そのカテゴリーらしいか」だけでなく、「競合一覧に並べたとき違って見えるか」という評価軸も重要です。

【事例画像おすすめ位置】
Ragged EdgeによるTabby公式ケーススタディのブランドビジュアルをここに掲載すると理解しやすくなります。

3|Guinness「LoVely」|ブランド記号をコピーに組み込む

Guinnessの「LoVely」キャンペーンでは、「Lovely」のVをブランドを象徴するハープへ置き換えています。

一般的な広告のように「コピー+ロゴ」と分離するのではなく、ブランド資産そのものをタイポグラフィの一部として使用しているのが特徴です。

広告KVやバナーでも、ロゴを右下へ置くだけではなく、商品形状、ブランドカラー、アイコン、ロゴの一部分などをコピーやレイアウトへ組み込む方法が考えられます。

【事例画像おすすめ位置】
Guinness「LoVely」OOHの公式キャンペーン画像をここに配置すると効果的です。

4|KFC Pocket Dips|SNS広告ではなく「投稿したくなる物体」を作る

KFCはLondon Fashion Weekに合わせ、9種類のディップソースをファッションアクセサリーのように扱うPocket Dipsを展開しました。

商品ごとに色やストラップ、ホルダーを設計し、ソースそのものを撮影・共有したくなるオブジェクトへ変えています。

ここで参考になるのは、SNS投稿を作るのではなく、SNSへ投稿したくなる体験や物体を作るという考え方です。

デジタル広告でも、完成したバナーだけを考えるのではなく、商品パッケージ、ノベルティ、撮影方法まで含めて企画するとSNSで二次拡散される可能性が高まります。

【事例画像おすすめ位置】
KFC Pocket Dipsの商品・着用ビジュアルをここに配置。

5|Heritage × Contemporary|歴史を消さず現代化する

2026年のブランド・Webデザインでは、歴史のあるブランドを現代化するときに、古い要素をすべて捨てるのではなく、アーカイブを新しいデザインシステムへ再利用する動きが見られます。

Santa Maria Novellaのデジタルフラッグシップでは、歴史的な植物図版、色、セリフ体、手描き要素などを現代的なUIへ取り込んでいます。

クラシックな素材と大胆な余白、現代的なグリッド、サンセリフなどを組み合わせることで、「昔っぽいサイト」ではなく歴史を感じる現代的なブランド体験にしています。

6|Web・LP|「最短距離」だけではなく探索させるUX

一般的なLPでは、FV、ベネフィット、CTA、悩み、比較、CTAというように、コンバージョンまでの距離を短くする設計が多く使われています。

一方、ブランドサイトでは、スクロールやインタラクションを通して情報を少しずつ発見させる「探索型」のUXも注目したい表現です。

Santa Maria Novellaでは、歴史、原料、処方、商品を探索するように見せることで、ECでありながらブランドの世界観そのものを体験できるサイトになっています。

LP制作でも、すべてをFVで説明するのではなく、強いビジュアル+短いコピーから始め、スクロールするほど情報が開く構成をブランド案件で試す価値があります。

【事例画像おすすめ位置】
Santa Maria Novella / AREA 17のサイトFV・商品ページをここに配置。

7|SNS広告|「UGC風」だけでは差別化できなくなる

SNS広告では、広告らしくないUGC風クリエイティブが定着しています。

しかし、単純にフォントを崩したり、素人っぽい写真を使ったりするだけでは、同じような広告が増えて差別化しにくくなっています。

重要なのは、冒頭の違和感や結論、理由、証拠、商品というように時間ごとに情報が変化する設計です。

静止画広告でも同様に、商品を大きく見せるだけではなく、レビュー、比較、結果、証拠など「ユーザーが続きを見たくなる情報」を1枚の中で設計することが重要です。

8|3D・モーション|未来感より「比喩」に使う

3D表現では、ネオン、クローム、未来都市、サイバーUIなどを見せるためだけではなく、抽象的な概念を分かりやすい物体へ変換する使い方が参考になります。

例えば「広告競争」をレースとして表現し、日用品をレーシングマシン化することで、説明の難しい概念を視覚的に理解できる映像にできます。

3D=かっこいい背景ではなく、3D=視覚的な比喩として考えると広告映像のアイデアが広がります。

9|Variable Font|文字そのものをモーション素材にする

Variable FontではWeight、Width、Slantなど複数の軸を持つフォントが増え、レスポンシブデザインだけでなくモーションデザインにも活用されています。

After EffectsではVariable Fontの軸をText Animatorから動かせるため、単純なScaleアニメーションではなく、文字そのものが太くなる、細長くなる、傾くといった表現が可能です。

タイトル、広告テロップ、イベントKVのモーションなどで活用しやすい表現です。

10|Adobe・Canva・Framer|制作データそのものをAIが扱う時代へ

制作ツールでは、AIが単独の生成機能として存在するのではなく、制作工程そのものへ統合される動きが進んでいます。

Adobe

After EffectsではAI Assistantが、プロジェクト整理、コンポジション確認、技術的な問題への対応、Expressionなど制作工程を支援する方向へ進んでいます。

Premiere Proでも生成AIモデルを編集タイムラインの中から利用する方向が進み、AIツールと編集ソフトの境界が薄くなっています。

Canva AI 2.0

Canva AI 2.0では、会話から生成、編集、ブランド適用、レイアウト、複数媒体への展開まで行う方向へ進化しています。

さらにMagic Layersでは、フラットな画像から文字、人物、背景、オブジェクトなどを解析し、編集可能な要素として扱う考え方が導入されています。

Framer

FramerではCMS List Fieldが追加され、FAQ、特徴、手順、事例などの繰り返し要素を1つのListとして管理しやすくなっています。

LPやサービスサイトでは、FAQ、機能一覧、料金、導入事例などをCMS化することで更新作業を効率化できます。

今後定着しそうなデザイントレンドは?

トレンド今後の見方
手描き・紙・アナログ質感定着寄り
Heritage × Contemporary定着
ブランド記号のレイアウト化定着
Variable Typography定着
AI生成物のレイヤー化今後かなり重要
UGC風広告定着。ただし表現は高度化
汎用AIグラデーション差別化しにくくなる
サイバー・クローム3D用途を選ぶ

今週すぐ試せる4つのデザインテスト

TEST 1|AIっぽくないAI広告

AIで人物や背景などの素材を生成し、Photoshopで紙、スキャン、手描き線、印刷質感などを加えます。AIだけで完成させず、人間の編集を最後に加えたときの差を比較します。

TEST 2|ロゴを右下に置かないKV

ロゴを一度外し、商品形状、ブランドカラー、ブランド記号などをコピーやレイアウトへ組み込みます。ブランド名を大きく表示しなくてもブランドが伝わるか確認します。

TEST 3|Variable Fontだけでタイトルモーション

After EffectsでScaleを使わず、Weight、Width、Slantなどフォント自体の変化だけで3秒程度のタイトルアニメーションを制作します。

TEST 4|同じLPのFVを2種類制作

A案はキャッチコピー、説明、CTA、人物を配置。B案は強いビジュアルと短いコピーだけで開始し、詳細をスクロール後に開示します。CV重視とブランド体験重視で見え方を比較します。

まとめ|AI時代ほど「ブランドらしさ」が重要になる

2026年9月のクリエイティブでは、見た目と制作工程で一見逆の変化が起きています。

ビジュアルでは、手描き、紙、歴史、写真、ブランド固有の記号など、人間味や固有性を強める方向。

制作工程では、Adobe、Canvaなどを中心にAIによる生成、編集、レイヤー分解、反復作業の効率化が進んでいます。

つまり今後は、AIで制作を高速化し、人間が「何を残すか」「何を削るか」「ブランドらしさをどう作るか」を判断する役割がさらに重要になると考えられます。

AIを使って派手にするのではなく、AIで制作時間を短縮し、その時間を文字組み、余白、構図、ブランド設計へ戻す。

デザイナーにとっては、この使い分けが今後さらに重要になりそうです。